交番でお金借りる「公衆接遇弁償費」が使えるのはどういう場面?

「財布を落としたからお金を貸してほしい」
「ひったくりにあって財布を無くしたから帰るための電車賃がない」
「外出先で緊急でお金を借りる必要がある」

こんな緊急事態でどうしてもお金が必要なとき、実は交番でお金を借りられます。

意外に思う人もいるかもしれませんが、交番でお金を借りる方法は「公衆接遇弁償費」と呼ばれるれっきとした公的制度です。

今すぐお金借りたい人へ、公衆接遇弁償費の内容と利用できる人、実際に交番で警察官にお金を借りる流れについて紹介します。

公衆接遇弁償費は交番や警察からお金を借りる制度!緊急時に貸してもらえる

公衆接遇弁償費は「こうしゅうせつぐうべんしょうひ」という読み方で、交番や警察の関係機関からお金を借りる制度です。

公衆接遇弁償費の注意点は、利用できる都道府県に限りがあること!
実は全国の交番どこでもお金を借りられるわけではありません。

公衆接遇金の弁償事務については、これまで「公衆接遇金の弁償事務取扱要
綱の制定について」(昭和 46 年9月 13 日付け熊会第 947 号、例規)に基づき
処理してきたところであるが、この制度を効果的に活用し適切な市民応接の向
上を図るため、新たに別添のとおり「公衆接遇金の弁償事務取扱要綱」を制定
し、平成元年8月1日から施行することにした。
(引用:公衆接遇金の弁償事務取扱要綱の制定について)

熊本県のように制度を設置している県もあれば、

県警察に確認したところ、現在、公衆接遇弁償費や県民の方に現金を貸与するといった制度はありませんが、今後も「犯罪の起きにくい社会づくり」のため、関係機関・団体と連携した防犯意識の高揚や防犯環境の整備、検挙による犯罪の抑止、制服警察官の姿を見せる街頭活動などを推進してまいりますので、警察活動に対するご支援とご協力をお願いいたしますとのことでした。
(引用:香川県|公衆接遇弁償費の限度額引き上げについて)

香川県のように制度そのものを取り扱っていない県の方が多いです。

現在、公衆接遇弁償費の制度がある都道府県は下記のとおり。

  • 東京都
  • 大阪府
  • 京都府
  • 愛知県
  • 群馬県
  • 宮崎県
  • 熊本県

これらの都道府県であれば、交番でお金を借りられます。

緊急時の貸付となるため、県外の人であっても利用できる制度ですが、返済は原則として借りた交番へ足を運ばなければいけません。

一時取り扱いがあった都道府県なため、現在は貸付がかなり厳しくなっている場合もあります。

交番でお金を借りられるのはどんな場面?実際の例を集めてみた

公衆接遇弁償費という制度があるからといって、誰でも交番でお金を借りられるわけではありません。

交番がお金を貸してくれるのは、次のような範囲に定められています。

  • 外出先で所持金を盗まれたり紛失した場合の交通費
  • 行方不明者等の保護にあたり、応急的な措置を行った場合の経費
  • 行路病人の保護または交通事故による負傷者の救護にかかった経費
  • その他公衆接遇の適正を期するため必要となる経費

参考:公衆接遇弁償費事務取扱要綱の制定について(PDF)

一番利用シーンが多いのは、財布を落としたり盗まれたりした場合でしょう。
実際にSNSでも交番でお金を借りた投稿がかなりありました。

手元に現金がないときは、家に帰るための交通費に相当する分を借りられます。

近年のキャッシュレス社会で、財布を持ち歩かない人が通信障害等で支払いできなくなったケースも多いとのこと。

公衆接遇弁償費は、いざというときに頼りになる制度ですね。

また急病人や事故でケガをした人の対応でかかる費用も、公衆接遇弁償費で借りられます。

例を挙げると、大量に出血していてタオルやガーゼが必要だけれどお金がない、といった場合です。

その他、行方不明者の保護にかかる救護費や交通費も借りられます。
いずれにせよ公衆接遇弁償費は緊急だと警察が判断した場合のみ利用できる制度です。

  • 手元に現金がなくどうしても帰宅できないとき
  • 緊急事態で調達できるお金がないとき

上記のような緊急時のみ利用できる制度だと覚えておくとよいですね。

公衆接遇弁償費で借りられる上限額は1,000円だけ

緊急とはいえ、交番でお金を借りられる金額の上限は1人1,000円と定められています。
※熊本県の場合は5,000円

これはあくまでも公衆接遇弁償費が緊急時に必要なお金であり、借りた後に返済が難しくない範囲として定められています。

東京都交通局の最大料金が片道430円、東京から千葉だとしても片道650円なので、電車であれば交通費は問題なく借りられるでしょう。

万が一1,000円を超える貸付が必要な場合は、交番の警察官で対応できる範囲を超えるため、事務担当者もしくは当番責任者の承認を得なければいけません。

緊急時の貸付となるため、万単位のお金を借りることは不可能だと考えておきましょう。
またあくまでも上限が1,000円となっているため、1,000円満額借りられるケースは少ないです。

交番以外でもお金を借りられる?公衆接遇弁償費を使える場所

トラブル時に交番が近くにない場合もあるでしょう。そんなとき以下の機関であれば、同じように公衆接遇弁償費を利用できます。

  • 警察署
  • 運転免許試験場
  • 鉄道警察隊(駅内に設置)
  • 駐在所
  • 地域安全センター
  • 警ら用無線自動車(パトカー)

警察に関係する機関であれば相談できるので、交番が近くになくてもパトロールをしている警察官に聞いてみるのも一つの手です。

また事故による負傷者の救護費用であれば、パトカーに乗っている警察官に相談してみましょう。

急いでいても大丈夫!交番でお金を借りる流れを紹介

交番

実際に公衆接遇弁償費を利用して、交番でお金を借りる流れについて紹介します。

1.最寄りの交番へ行く

交番に出向き、お金を借りたいと申し出ます。

このとき緊急ではないと警察官が判断してしまうと、お金を借りるのが難しくなるため、嘘をつかずありのままの事情を話してください。

闇雲にお金を貸してほしいと伝えるのではなく、公衆接遇弁償費を使ってきちんとお金を借りたいと申し出ましょう。

2.借受願書に記載する

警察官がお金を貸してもよいと判断したら、借受願書に記載を行います。
これは借用書のようなもので、借り入れの証拠を管理上残しておく必要があるためです。

  • 借りる日付
  • 住所
  • 職業
  • 電話番号
  • 氏名
  • 生年月日
  • 年齢
  • 借りる金額
  • 借りる理由

借受願書には押印しなければいけませんが、指印で代用できるためハンコがなくても問題ありません。

借受願書を書くことで、警察署にはお金を借りた履歴が残ってしまうことについては、了承する必要があります。

事故や病人の救護にかかわる借り入れの場合は、借受願書への記入はいりません。

借受願書の記載が完了したら返済書を渡され、その場でお金を借りられます。

公衆接遇弁償費は直接交番へ返済しに行かなければならない

公衆接遇弁償費は無利子・無担保で借りられて、返済期限も特に設けられていません。
とはいえ警察からお金を借りている以上、なるべく早く返済するようにしましょう。

返済は原則として、お金を借りた交番へ直接返済しに行かなければいけません。

しかし旅先でお金を借りたなど、やむを得ず交番へ出向けない場合は、自宅の最寄りの交番へ代わりに返済が可能です。

振込等には対応していないため、時間を見つけて早めに直接返済しに行きましょう。

返済する際、領収書が必要な場合は、申し出ることで作成してもらえます。

交番でお金を借りる注意点!逮捕されるケースもある?

公衆接遇弁償費は公的制度とはいえ必ずお金を借りられるわけではありません。

交番でお金を借りる注意点について見ていきましょう。

返済できないと逮捕される可能性もある

交番でお金を借りるという特殊な方法ゆえに、返済できないと逮捕されるケースもあります。

過去には、電車代を借りる名目で公衆接遇弁償費を利用し、返済しなかったとして男性が逮捕されている事案も起こっています。

上記の場合、交番で繰り返しお金を借りていたことと、借受願書に知人の名前を書いていたことから寸借詐欺の疑いで逮捕されました。

「疲れたので電車に乗りたかった」という理由だったようですが、誰でも気軽に借りられない制度であることがわかります。

返済するつもりがない以外にも、嘘をつくことで逮捕されるケースもあるので、本当に困っているときのみにとどめておきましょう。

公衆接遇弁償費には毎月の上限がある

公衆接遇弁償費は毎年年度はじめに各交番や取り扱う機関へ交付されます。

金額は機関によって異なるため、交番に貸し出せるお金がない場合は借りられません。

毎月1回、出金は行われますが、必ず借りられるものではないと覚えておきましょう。

公衆接遇弁償費は借りにくくなっている?借りられないのはどんな場合?

公衆接遇弁償費は、だんだんお金を借りにくくなっているのが現状です。
その理由に返済率の低さが挙げられます。

公衆接遇弁償費の利用状況

貸出件数(交通費):1万6372件
金額:752万0685円
返済された金額:483万6320円
※警視庁データ

警視庁のデータを見ても、返済率は65.0%未満。3分の1以上の人がお金を借りても返していない状況です。

それにより制度自体の廃止の声があがったり、実際に廃止された地域もあります。

このような状況から警察官は公衆接遇弁償費に対して慎重になっており、次のような場合、お金を借りられない可能性があります。

緊急だと認められない場合

公衆接遇弁償費の目的に反して緊急性が認められない場合、お金を借りられません。

警察官によっては、自分の不注意で財布を落としただけではお金を借りられないケースもあるようです。

他に借りる充てがある場合

親や友人にお金を借りられそうな状況であったり、職場が近かったりと、他にお金を借りられる充てがある場合は、公衆接遇弁償費を断られるケースが多いです。

財布を盗まれたといった事案の場合、名目上は交通費として支給を行うため、交番まで親や友人に迎えにきてもらえる状況ならば、送迎を優先させる可能性が高いでしょう。

返済する見込みがない場合

生活に困っているなど、そもそも返済できる見込みがない場合は、公衆接遇弁償費ではなく自治体の制度を紹介される可能性があります。

警察官としても返済してもらえないと困るため、返済の見込みがなかったり、返済するつもりがない人には貸付できません。

焦らないで!交番以外でお金を借りる方法を検討しよう

もし交番でお金を借りられそうになかったり、公衆接遇弁償費を利用できなかった場合は、別の方法を検討しましょう。

万が一手元に財布がなくても、以下のものがあれば他でお金を借りられる可能性があります。

  • スマートフォン
  • 身分証
スマートフォンが手元にある場合

スマートフォンが手元にあれば、アプリで借りることができます。
消費者金融のアプリローンのほか、銀行や後払い対応のアプリなど、その数は10個以上!

スマホさえあればすぐに申し込みできるため、スムーズにお金を用意できます。

身分証が手元にある場合

免許証やパスポートなど身分証が手元にある場合、消費者金融でもお金を借りることができます。

消費者金融の店舗まで行き、借り入れの申し込みをするだけ。スマホも手元にある場合は、公式サイトからの申し込みも可能です。

申し込みから最短30分で現金を手に入れられるので、緊急時でも対応できます。

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林裕二監修者コメント
公衆接遇弁償費は借り入れ上限額、返済方法、返済できなかったときのリスク等を考慮すると、利便性はとても低いです。本当に数百円程度、緊急でお金が必要なときに利用すべき制度です。その他、お金が必要となる状況になったときは、消費者金融等からの借り入れを検討したほうが良いでしょう。
林裕二林裕二
2018年に2級FP技能士検定に合格後、AFP登録を実施。FPライターとして金融系記事をメインに寄稿するとともに、大手金融サイトで記事監修も開始。ファイナンシャルプランナーとして、読者に対して正しい情報を届けられるよう監修を行う。また、ファイナンシャルプランナーとしての専門知識に加え、ライターとして培ってきた知識を踏まえ、専門性の高い監修を行うことを心掛けている。